新型コロナウイルス感染症の治療薬について
2024/4/1
当院では新型コロナウイルス感染症の治療薬として、漢方薬、解熱鎮痛剤とともに抗ウイルス薬のゾコーバ錠(日本国産の薬)、ラゲブリオカプセル(外国から輸入している薬)の投与を行っています。
これまで高額な新型コロナウイルスの抗ウイルス薬は全額公費負担となっていたため、患者さんの窓口での自費負担はありませんでしたが、令和5年10月1日からは公費負担が大幅に減額となり、また令和6年4月1日からは公費負担はなくなります。医療費の自己負担割合に応じて、ラゲブリオカプセル、ゾコーバ錠処方時は、医療費が3割負担の方でそれぞれ約2万8000円、約1万6000円の自己負担が、その他の費用に追加して求められます。非常に高額となるため、新型コロナウイルス感染への抗ウイルス薬投与は難しくなるかもしれません。
通常新規の薬剤が日本国内で使用できるようになるまでには、時間をかけて各種の調査、治験を行いますが、新型コロナウイルスの抗ウイルス薬に関しては、急速な新型コロナウイルス感染の流行の拡大に対応するため、調査、治験の一部を簡略化、省略化された上での特例的な承認となった経緯があります。
現時点でわかっている範囲では、これらの抗ウイルス薬投与による副作用の頻度は、一般的に流通している他の薬剤と比較して大きく変わらないと言われています。一般的な各種内服薬に認められるような蕁麻疹、胃もたれ、下痢、めまい(浮動感など)、軽度の血液検査異常(軽度の肝機能障害、血中コレステロール値の変動などの血液検査異常)の報告はありますが、他の薬剤と比べて、出現頻度が多い傾向はないようです。アナフィラキシー(重篤なアレルギー症状)、特殊な神経疾患、重度の肝障害などが出現する可能性はありますが、これらも他の薬剤と比べて多い傾向はなく、極めて稀です。
ただし、ラゲブリオカプセルは61歳以上の方、基礎疾患があり治療中の方、喫煙中の方等、重症化のリスクのある方にしか適応が認められていません。また、発症後5日以内に内服を開始する必要があります。
ゾコーバ錠は12歳以上で診断が確定して症状がある方には投与可能ですが、持病で定期内服のある方は、内服薬によっては、ゾコーバ錠内服によりゾコーバ錠と定期内服薬が影響し合って副作用を生じやすくなるケースがあるために内服できません。また、少しでも妊娠している可能性がある女性は内服できませんので(動物に投与した実験で胎内の赤ちゃんに影響があったことがわかっています)、若い女性には投与しづらい欠点があります。また、発症後72時間以内に投与を開始する必要があります。
投薬の効果としては、個人差があり、著効例もありますが、解熱が少し早くなる、という程度の効果に留まるケースも多い印象です。新型コロナウイルス感染症に良く認められる激しい咽頭痛、咳き込み、頭痛等の発熱以外の症状は内服後も持続する方が多いようです。ラゲブリオカプセルの方が少しゾコーバ錠より効果が高いと言われています。